[レポート]スポーツICTミートアップ

スポーツICTミートアップ
日時:2014年3月23日(日)18:00-21:30
会場:株式会社マックスヒルズ(大阪市中央区)
目的:スポーツをする・教える・支える人たちが集まりそれぞれの立場でのICT活用についてのノウハウを共有する。
参加者:安宅優輔/アスレティックトレーナー、粟谷健礼/理学療法士、池田克也/S&Cコーチ、魚田尚吾/研究者(スポーツ医学)、打谷昌紀/コンサルタント、冨田武綱/フィジカルコーチ、永田聡典/アナリスト、廣見剛利/マーケター、山下大地/研究者(スポーツバイオメカニクス)
敬称略

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3月23日、スポーツにおけるICT活用のノウハウを共有することを目的に「スポーツICTミートアップ」を開催いたしました。今回は2人のスピーカーからスポーツ現場でのICTの活用方法を紹介するとともに参加者それぞれの立場でICTをどのように活用しているかや抱える課題についてディスカッションしました。当日紹介した内容に加筆しスピーカー二人の内容をレポートします。

スピーカー1/打谷昌紀

MLBのように複数の下部チームをもつプロ球団から数名しか選手がいない大学生チームまで、その規模に差はあるものの”情報”をいかに迅速に共有できるかはそのチームの目標達成に大きな影響を及ぼす。離れたスタッフ間や頻繁にチームに帯同できないスタッフにとってタイムラグなく情報を”同期”することは簡単ではない。

詳細なスケジュール、ミーティング議事録、戦術、プレイブック、練習計画、スカウティング情報、ゲームアナリシスデータ、疾病傷害情報、コンディション、フィットネステストデータ、リハビリの進捗状況、トレーニングプログラム、備品の在庫、会計情報、広報情報、リクルーティング、スタッフの教育etc 挙げればきりがないが、これらは日々変化することから通常は担当者しか把握できていない情報となってしまっているのが現状ではないだろうか。

このような問題を解決する手段として企業のようにチーム内にイントラネットを構築することが解決策の一つとして挙げられる。このイントラネットをベースにいくつかのツールやサービスを併用することで質の高いチームマネジメントが可能になるだろう。今回は、GoogleAppsの活用方法と、現場で手軽に使える映像分析共有アプリ、そしてWi-Fi搭載のビデオカメラを紹介する。

◎グループウェア
イントラネット構築のためには以前は自前のサーバー等で運用しているところも少なくなかったが、最近はクラウドベースのグループウェアが主流になっている。サイボウズOffice、マイクロソフトのOffice365GoogleAppsなどあるが予算や目的によって検討する必要がある。その中でもGoogleAppsは、GmailやGoogleドラブを独自ドメインでPC、タブレット、スマートフォンで使うことができるため、既にGmailを使ったことがある人なら理解しやすく導入時の研修を必要最小限に抑えることができる。

“サイト”機能を使えば簡単にチームのポータルサイトを作成できるため、リアルタイムに更新されるチームのハンドブックのような役割を果たす。データの共有やネットミーティングだけであればGoogleドライブやハングアウト(動画チャット)だけでも可能だが、各データへのアクセス権限の管理や疾病傷害情報などをはじめとする個人情報の保護、そしてイントラネットとしての機能を果たすにはGoogleAppsなどのグループウェアが必要になってくる。

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GoogleAppsの各種機能

Googleサイト

GoogleAppsの組織とグループ

美容室でのスタッフ研修の活用例(どの分野でもスタッフの教育は重要な課題)

◎各種測定データ収集・整理の効率化
「フォーム」と「スプレッドシート」をうまく活用することでデータの収集、整理、分析、蓄積の効率を上げることができる。「フォーム」はHTMLやCGIの知識がなくても簡単にアンケートフォームのようなウェブページを作ることができる機能である。

フィットネステストやフィジカルチェックなどの各種測定では、チームによっては100人以上のデータを収集、整理しなければいけない。従来は一人一人が、あるいは測定者が記入し、測定が終わった段階でExcelなどの表計算ソフトに入力し、グラフ化したり必要であれば統計ソフトにデータを移行するというのが一般的であると思う。人数によるがこのやり方では入力だけでも少なくとも数時間から数日はかかる。

この入力の部分だけであれば「フォーム」を活用することで数分に短縮することができる。またその後のスタッフ間での共有や選手へのフィードバックも下記のような手順で単純化することができる。
1.あらかじめ測定項目を入力するフォーム(アンケートフォームのような画面)を作っておきそのURLを事前に選手にメールやLINE等で送っておく。もしくはURLからQRコードを作成し体育館やグラウンドに掲示しておく。
2.選手はスマートフォンで読み取る。
3.測定用紙にすべて記入した段階でフォームにアクセスし名前や測定データを入力し送信する。
4.送信したデータはすべて一つのスプレッドシートに保存される。
5.名前順、ナンバー順、学年順など一瞬で自由に並べ替えることができる。
6.関数を使い統計データを作成したり、グラフ機能等も活用すれば個人別のフィードバックシートを作成できる。
7.スプレッドシートの共有機能で他のスタッフとクラウド上でリアルタイムで編集をすることができる。

◎疾病傷害データの共有
前述の「フォーム」でSOAPノートの入力画面を作成すれば、スマートフォンやタブレットで場所を選ばずSOAPノートを記入することができ、そのデータはスプレッドシートにアップされるためスタッフ間がリアルタイムで情報を共有することができる。
さらに関数やソート機能等を使いカスタマイズすれば簡易的なデータベースを作成することができる。

ここで気をつけなくてはいけないのが個人情報の取扱についてである。特にメディカルチェックのデータと疾病傷害データは共有レベルを十分にコントロールしなければならない。GoogleAppsでは管理者が”組織”と”グループ”における共有レベルを細かく設定できるため、アカウントの乗っ取りなど不測の事態に迅速に対応することができる。もちろん2段階認証の徹底、パスワードを使いまわししない、USBメモリなどを持ち歩かない等個人レベルの防御策は必須である。

これらの他にも「フォーム」を使えば交通費の精算、備品の発注、練習日誌、業務日誌、スタッツ入力などをスマートフォンで入力でき、「スプレッドシート」との組み合わせで様々な業務を効率化、共有化できる。

※参考情報
選手の傷害情報などをウェブ上で管理するサービスAHMS (Athlete Health Management System)はMLBなどのチームで導入されている。日本にもオンラインカルテのサービスもあるが、汎用性を考慮すればFileMakerMicrosoft Accessをカスタマイズして使うことをオススメする。

◎映像分析共有アプリUbersense
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アメリカで開発されたiPhone/iPadアプリ。ロンドンオリンピックやソチオリンピックのいくつかのUSチームが採用していた。シンプルな操作性と「共有」することが大前提のつくりと何よりここまで使えてフリーなのが素晴らしい。2画面比較、描画ツール、角度計測、スロー再生、音声コメント、メンバーのグループ化、共有機能など、”動き”を撮影しオンラインで共有するのに最適なアプリだ。Ubersenseユーザーが様々なスポーツの動画ファイルをアップロードし共有しているため、それらをダウンロードし自分と比較することも可能である。種目も豊富でラクロス、ボーリング、フィギュアスケート、スキーなどもある。

◎コーチングビデオカメラ
アメリカで発売されているJVC製PX-100はWi-Fi対応のビデオカメラでiOS、Android対応の専用アプリを使えばスマートフォンやタブレットからカメラを操作できるとともに一部の映像を転送することができる。また、専用アプリには描画ツールや2画面比較機能もあるため、スポーツ現場でのコーチングに最適である。また、ハイスピード撮影(最大600fps)にも対応しておりパフォーマンス分析に威力を発揮する。
日本で発売されている同型機P-100は残念ながらWi-Fi対応ではないが、ヤマダ電機オリジナルモデルのGC-YJ40はWi-Fiに対応している。

◎Wi-Fi搭載スポーツカムADIXXION
スマホからのリモート操作にも対応した耐水性も備えたタフなカメラで、iOS、Android対応の専用アプリを使えばカメラの映像がリアルタイムで見ることができる(4台同時も可)。アイデア次第で様々なシーンに使える。

 

スピーカー2/永田聡典

バレーボールでは「データバレー」という分析ソフトが多くのチーム、アナリストに使われており詳細な分析のためには必要不可欠なツールとなっている。しかしながらそれを使いこなすためにはそれなりのスキルが必要となるため入れ替わりの激しい学生チームではその運用は容易ではない。また、ミーティングの頻度は試合期に週に一度程度。映像を見る機会はその時のみで、アナリストがいるチームでも試合の映像を見る事が少ない事が多い。

トップリーグでは、一人一台PCやタブレット端末をもっているため、動画を簡単にシェアすることができ、また個人のペースで試合動画とスタッツデータを確認する事が出来る。
しかしながら、資金の少ないチームや、PCを持たない大学生、高校生以下のチームでも動画やスタッツデータを活用するためにはいろいろと課題が多いのが現状である。

そこで、今やほとんどの学生が持っているスマートフォンでも操作できる映像分析共有ソフトウェアの「hudl」に着目した。今回hudlを活用した学生チーム(関西大学女子バレーボール)におけるバレーボールのアナライジングシステムそしてSNSを用いたチーム情報共有のノウハウを紹介させていただく。

◎映像分析共有ソフトウェア、アプリhudl

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アメリカンフットボール、バレーボール、バスケットボール、レスリング、陸上競技、ラクロスなどに対応したクラウドベースの映像分析共有ソフトウェア,アプリで、タブレットやスマートフォンから簡単に映像を呼び出すことができ、インターネット環境さえあればどこでも見たい映像をチェックすることができる。タブレットやスマートフォンで利用することを前提としたソフトウェア、アプリであるため操作が簡単であり、PCなどに比べて使い慣れているデバイスであるため、動画をいままでより確認しやすい。

また、課題であった試合動画とスタッツの確認への頻度が、大きく向上することで技術確認や戦術理解への効果が高まることが期待される。映像へのアクセスのし易さが一番のメリットであると考えている。また学生はスマートフォンの操作に日常の時間を多く費やしているため、スキマ時間にhudlによる映像確認をしていることが多かった。映像を個人で確認することで、ミーティングの時間も効率的に使うことができた。またhudlにはコーチがテキストや音声によるコメントが入力出来る事も戦術理解に大きく貢献する。

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◎SNSを活用した情報共有
チームのFacebookグループでは主にバレーボール選手として必要な様々な情報をコーチから配信し共有するために使用しています。他のスポーツやスポーツ医科学、モチベーション向上に繋がるような情報等を掲載することでその裏にあるコーチの隠れたメッセージも伝えることができ、選手同士、またはコーチと選手間の微妙なバランスを保つ重要な役割を果たしている。
LINEは前述のhudlに新しい分析映像がアップされた際にその旨通知するというような連絡を主な役割として使用している。

 


次回は一般の方もご参加いただけるようにカンファレンス形式で開催する予定です。開催が決定しましたら当ウェブサイトでお知らせいたします。
Facebookグループ「スポーツICT研究会」内でも告知しますのでリクエストいただいてもけっこうです。 ご意見ご感想はこちらまで


2014-03-27 | Posted in セミナーレポートComments Closed 

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